運送業における基本給・割増賃金振り分け方式の賃金制度は有効?

弊社では月間の売上に歩合率をかけて総支給額を計算し、最低賃金を基本給として支払い、残りを時間外手当として支払っています。
割増賃金の計算は法定通りに行い、足りない分は手当として支払っています。
この方法で問題ないでしょうか?

裁判で無効と判断される可能性が高いです。

基本給・割増賃金振り分け方式は運送会社でよく導入されている賃金制度ですが、このような賃金制度が裁判で争われたときには、無効と判断される可能性が高いです。

ある手当が割増賃金の趣旨で払われているといえるためには、それが時間外労働の対価として支払われていること(対価性)、そして基本給部分と明確に区分できること(明確区分性)の2つが雇用契約書や就業規則において明確になっている必要があります。

雇用契約書や就業規則で乗務手当が割増賃金の趣旨で払われることが明確になっていない場合は、対価性の要件を満たしていないことになり、無効となります(日本ケミカル事件最高裁判決)。

今回の質問と同様の賃金制度が問題となった2023年3月10日の最高裁判決(熊本総合運輸事件判決)で、最高裁は、「時間外労働の多寡によって賃金総額が変わらない賃金制度は違法」と判断しました。

賃金制度が無効とされた場合、支払額全体を基礎賃金として計算した残業代の支払いを求められます。

仮に当事者間において乗務手当が割増賃金の趣旨とすることが口頭で合意がされていたとしても、立証の問題や就業規則の最低基準効の問題が生じます。

早急に賃金制度の見直しを行うことをおすすめします。

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