パワハラ被害を生まないために「パワハラの3要件」を理解しましょう

パワハラに対する世間の目は日に日に厳しくなっています。

「パワハラと指導の境界線は?」「結局、個人の受け取り方次第ではないのか?」
このような疑問をお持ちの方は多いと思います。

パワハラに関しては最近まで直接的な法規制がありませんでしたが、「労働施策総合推進法」という法律が改正され、定義が明確にされました。

それによると、パワハラとは
①職場における優越的な関係を背景に、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えて、
③労働者の就業環境を害すること
をいいます。

まず、「職場における優越的な関係」について詳しく見ていきましょう。

「職場」とは、業務を遂行する場所を広く指します。
会社内、トラックの車内、取引先との打ち合わせの場はもちろん、業務時間外の懇親会も職務の延長にあるものは「職場」に当たります。
接待の場や全員参加の懇親の場は「職場」と判断される可能性が高いです。
お酒を飲んだときも言動には注意しましょう。

「優越的な関係」は、上司・部下の関係に限られません。
たとえば、新しく配車システムを導入した配車係にパソコンに疎い上司のAさんと、システムにはめっぽう強い部下のBさんがいたとします。
Aさんがシステムを使いこなすための支援をBさんがあえてせず、Aさんの業務の遂行に支障が生じたらどうなるでしょうか?
Bさんは部下という立場ではありますが、「優越的な関係を背景に」しているため、このような行為はパワハラに当たる可能性があります。

パワハラの要件の2つ目は、「業務上必要かつ相当な範囲を越えていること」です。
逆に言えば、業務上必要な指導を適切な形で指導する分にはパワハラにはなりません。

では、どのような指導が一線を超えたと判断されるのでしょうか?

まず、殴る蹴るなど身体的な攻撃はパワハラ以前に犯罪であり論外です。

相手の人格を否定するような言動も一発NGです。

「これだから〇〇出身のやつはダメなんだ」「気持ち悪い顔をしやがって」など、相手のバックグラウンドや容姿に言及するのもNGです。

指導の態様にも気をつける必要があります。
物を投げる、机を強く叩く、大声で怒鳴るなどはアウトです。

よくあるのが、皆の前で長時間にわたって叱責するケースです。
「周りに示しを付けるため」という理由でこのような指導をする管理者がいますが、これは指導の相手だけでなく、周りの従業員に対するパワハラにもなる可能性があります。

パワハラを避けるために私がよくお伝えすることがあります。
それは「具体的な事実に基づく指導を行う」ということです。
具体的な事実について、何がいけなかったのか、どうすればよかったのか指導する分にはパワハラにはなりません。

運送業ではミスや不注意が人命や安全にかかわることがあります。
この場合は重大性に応じた指導をする必要性が認められますので、厳しく伝えること自体は問題ありません。
ただし、厳しく伝えるときも「具体的事実に基づく指導」を意識するようにしてください。
そして適切な伝え方を心がけてください。
そうすればパワハラになってしまうことはありません。

何でもかんでも「パワハラだ」と言ってくる従業員には、「必要な指導であってパワハラにら当たらない」と自信を持って伝えましょう。

最後に、パワハラの3つ目の要件「労働者の就労環境を害すること」について解説します。

「就業環境を害する」という表現は少しわかりづらいですが、簡単に言えば、相手が嫌な思いをして、仕事に支障が出ることです。
仕事に支障が出ない程度のことなら問題ありません。
そしてこの判断に当たっては「平均的な労働者の感じ方」が基準になります。
つまり、同じ状況で同じ言動を受けたときに社会一般の労働者がどう感じるかです。

ただし、相手がうつ病などのメンタルヘルス疾患を抱えている場合で、行為者(つまりパワハラする側の人)がそれを知っている場合には、相応の配慮が求められますので注意しましょう。

もう一つご理解いただきたいことがあります。
それは「社会一般の労働者がどう感じるか」は時代の流れとともに変わる、という点です。
自分の感覚がいつの間にか世間の感覚とズレていないか、日頃から周りを観察したりニュースを見たりして確認し、ズレていたら修正しましょう。

「運送業ではこれくらい普通」は言い訳になりません。

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